今回は、有限会社沙二衣・サニー美容室代表、
塩江和子氏の独立開業体験談を紹介させていただきます。
開業を考えている方はぜひ参考にしてください。

PROFILE

塩江和子 / Kazuko Shioe 
有限会社沙二衣　サニー美容室　代表
昭和34年1月10日 生まれ　A型

徳島県三好市生まれ。29歳で独立。
美容学校を卒業して独立まで美容室で美容師として働く。子供の体調不良をきっかけに時間に自由のきく独立開業を決める。
1989年11月に徳島市津田本町で開業。
座右の銘は、「前進あるのみ」
好きなことは、「本を読む、書く」

COMPANY

有限会社　沙二衣
徳島県徳島市上八万町上中筋568-9
TEL.：088-642-3205
営業時間：AM10:00〜PM19:00
定休日：年中無休

職歴と経歴を教えてください。

旭美容学校を１８歳で卒業して、そのときに美容師免許を取得しました。それから１年間くらい池田町で美容師見習いをした後、徳島市にでてきて。１９歳から、独立する２９歳までは、徳島市内の美容室で働いていました。

どこの美容室に行かれていたんですか？

徳島に来てすぐ（今はないと思うんですが）マキシムという美容室に。それから結婚するまではスーパーナウ、結婚してからはパートでマサコ（コアフィールド マサコ）に行っていました。

そして２９歳で独立されるわけですね。一番始めにお店を出された場所はどこですか？

徳島市の津田本町です。

お店を出したきっかけは？

子供が二人いるんですけど、下の男の子の三歳児検診のときに、おしっこに血が混じっているということで精密検査をすることになったんですね。でもなかなか原因がわからなくて。それから病院を手当たり次第にまわってたんですけど、仕事と子供とどちらが優先なのかと考えたときに、やはりそれは子供だったわけですね。子供の病院通いを中心にするとなると、お店にも迷惑を掛けてしまうし、仕事は辞めることにしたんです。結果的には、どこも悪くなかったんですけどね。半年くらいはいろんな病院で調べてもらいました。何万人に一人くらい、そういう症状がでる場合があるということでした。その子ももう２１歳ですけど、今もって検査結果には異常はないようですし。心配はなくなったんですけど、仕事は辞めてしまったわけですから「これからどうしよう」と考えましたね。それで「自宅を美容室にしたら、子供の面倒をみながら仕事もできるじゃないか」と。そして独立することを考えたわけです。勤めていたら、休みにしても勤務時間にしても自由にならないじゃないですか。子供がまだ小さかったから、なるべく早く帰れるように、なるべく一緒にいられるように、と考えて独立することにしました。

住宅兼店舗だったということですか？

そうしたいと思っていたんですけど、住宅地だからということでまわりの人の反対にあいました。分譲住宅２５軒くらいの中の１軒なんですよ。
そうしているうちに、知り合いのディーラーさんから「津田本町の美容室の先生が辞めるから、引き継いでくれる人を探している」という話を聞いたんです。それでお店を見に行ったのが始まりです。

そのとき（独立するとき）の資金調達はどのようにされたんですか？

当時そんなに余裕のある生活をしていたわけじゃないし、家のローンもありました。親からの援助もなかったですし、ゼロからの出発です。まず、国民生活金融公庫から融資を受けることを考えたんですが、５００万円必要とする場合、２５０万円は貸してくれるけど２５０万円は自己資金として用意しなければならなかったんですね。いわゆる「国金」からはお金は借りられないと。
そこで銀行をいくつかまわったんですけど、最終的に５００万円貸してもらえたのは徳銀さん（徳島銀行）でした。徳銀さんとは、家のローンでのおつきあいがありましたし、主人がサラリーマンで安定した収入があったというのもあると思います。加えて、私がそれまでずっと美容師の仕事を続けてきたということ、将来性かな、そのあたりを信用してくれたんですね。

津田本町のお店は買い取ったわけですか？

美容室を営業していくのに必要な備品なども含めて、営業権利を買い取ったというかたちです。昔はよく「居抜き」という言葉を使っていましたが、「美容室を居抜きで買った」ということですね。建物は大家さんから借りていることになるので、敷金・礼金と家賃、これはまた別に払う必要がありました。

開店当初の売り上げはどうでしたか？

「お店についていたお客さんごと引き受けた」わけなので、売り上げの心配はありませんでしたね。宣伝したり広告を出したりする必要もありませんでした。その後、お客さんが（私の美容室を）気に入ってくれる、気に入ってくれないというのはありますけど、とりあえず開店翌日からお客さんは来てくれましたし。その点は楽でしたね。

開業してから辞めたいと思ったことはありますか？

ありますよ。辞めたいってずっーと思ってますよ。一番の問題はやっぱり、お金と人、ですね。それは独立する前にも感じていたことではありますけど。
お金の問題は商売している以上常にありますよね。それにこの業界は、まず人を育成しないといけない。すぐには無理じゃないですか。女の人が多いので、せっかく育てても結婚や出産で辞めてしまうという問題もあります。そんな問題が永遠につきまとうわけなので、できれば仕事を辞めて、のんびりと主婦をやっていたいなあと。でもそれをできない現状があるからやるしかないという感じですね。本心では辞めたいと思ってます、いつも。

開業してよかったことや感動したことはありますか？

よかったと思うことは、自分の目標に向かって、主体的に行動できるっていうところですね。それが例えば「今日３人だったお客さんが明日は５人になるように、今月１００人だったお客さんが来月は１０１人になるように」みたいな小さなことでも、目標を立てて実現していくのが楽しいんです。目標を持って、それに向かって生きられるっていうのが嬉しい。

成功しているポイントは何でしょう？

前向きに頑張っているからだと思いますよ。絶対、マイナスには考えないんです。亥年ですしね（笑）。猪突猛進、後退はないんです。これで１００％だと現状に満足することもありません。
１店舗目を開店した後も、ああしよう、こうしようと工夫しながら２回くらい改装しましたね。そしてもっと広いところで仕事がしたいと思うようになって、土地を買って移転したんですよ。自社ビルを建てたんです。そこからさらに広いところを探して規模としては思うようになったけど、それからも「こんな美容室がしたい」という思いを実現しながら、今のような美容室を作り上げてきたわけです。

国府店・女性に嬉しい足湯
その間に、売り上げや人の問題、いろんなことがありましたよ。でもいつも前しか見ていないから。結果的に成長を続けられていると思うんです。だから楽しいですね。マイナスに考えたら、暗くなるでしょう？おもしろくないでしょう？まわりの人がたとえ「マイナス」だと考えることがあったってプラスに考える。前進あるのみ！歳もひとつずつ増えていってるんだから、その分、成長していきたいですよね。

独立する人に一言お願いします。

自分がしたいようにしたらいいと思いますよ。それが一番！自分が思ったとおりにすれば、人のせいにしないし、自分で責任がとれるじゃないですか。私もいろいろ経営の勉強をしながら、コンサルタントの方の意見も聞いてみたりしたこともありますけど、やっぱり自分の思うようにするのが一番いいと思います。いろんな意見はあると思いますけどね。
コンサルティングを頼んだり、アドバイスをもらったりしたら、よくなったらその人のおかげ、悪くなったらその人のせい、というふうになっちゃいますよね。それだったら、自分がしたいようにしたほうがいい。よくなっても悪くなっても経営者である自分の責任。そうやってチャレンジすることが大切だと思います。