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開業体験談 Vol.20 「宣伝・広告一切しなかった、踏ん張りつづけた1年目」

nakamura.jpg今回は、chez:nakamuraオーナー、
中村辰夫氏の独立開業体験談を紹介させていただきます。
開業を考えている方はぜひ参考にしてください。

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PROFILE

中村辰夫 / Tatsuo Nakamura 
chez:nakamura オーナー
昭和40年7月26日 生まれ O型

福井県生まれ。40歳で独立。 
福井の高校を卒業後、料理の道に入る。某ホテルの開業を機に徳島へ。組織の管理職より現場での仕事を求め、自然な流れで独立に至る。 
2005年11月に徳島市で開業。
座右の銘は、「温故知新」
好きなものは、「世界史」

COMPANY

chez:nakamura
徳島県徳島市大道1丁目51番地P’sビル1F
TEL.:088-626-5435
営業時間:PM18:00〜AM1:30LO
定休日:日曜

独立しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

photo1.jpg会社という組織の中にいると、年数を重ねるうちに管理職になって、現場から少し遠ざかってしまう時が来るわけです。私は、現場で物を作っていきたい、お客様と直接接していきたいという思いが強かったんですね。会社勤めをしていく中、独立しようか!このまま勤めようかと、その時々で考えることは多少違いましたけどね。でもある時期に迷っていたことでも、どうしてもそうしたいという気持ちが強くなることがありませんか?私の場合「これから自分はどう生きていくのか」「自分が好きなこと、一番やりたいことは何だろう?」と2年間くらい悩みながら、その間にいろいろ見聞きして、自分の思いと状況が一致したというか、そういう時が来たんだと思います。特にこの場所でなければとか、こうしたいとか、最初からそういうものがあったわけではないんですね。この場所が見つかって、資金的なものや、ここで見込まれる客層や立地条件など決まったものが出てきて、そこから自然な流れで、今のようなお店のスタイルでということになったわけです。

資金調達はどのようにされたのでしょうか。

私の場合、県外出身なので、国金(国民生活金融公庫)がメインになりましたね。自己資金もありましたが、銀行とリースを使いました。

開業時に掛かった費用の内訳は?

内装だけでも1000万円近く掛かっています。全体でいうと1000万円は優に超えていますね。いろんな人のお力添えや協力もありましたけど、それでもかなり掛かっています。自分の構想の中で、やりたいと思っていることが10あるとしたら、1から1つ1つ揃えていくより、まとめて買うほうがいいんですよ。資金が足りないからといって、その時々で買っていくと、500万円の物を揃えようとしたときに、結局1000万円掛かったというようなことにもなります。初期投資は増えますが、最初の段階で一度に揃えておくのがいいと思いますよ。

資金調達はすんなりいきましたか?

すんなりというわけにはいきませんでしたね。私の場合、地元出身ではありませんので、保証人を頼むときも県外になりますし。銀行によってはそれではだめだというところもあって、そういう面でのハンディもありました。事業計画書も提出しましたし、何よりもその業界での実績ですね。2年、3年で独立しようとしても、国金さんではなかなか借りられないですよ。どれだけ経験があるかとか、勤めた会社のネームバリューとか、そういうものも決め手になります。国金さんの場合、借りられる上限額については、預貯金額に対してこれだけというほぼ決まった基準がありますけれども、経験については絶対条件ですね。

開業当時の売り上げはどうでしたか?

私の場合、開業して1年間はメディアを使っての宣伝、広告はいっさいしませんでした。このあたりは普通のお店とはちょっと違っていますね。オープン時に宣伝したり、広告を出したりすれば、しばらくはそれなりにお客様が来るかもしれませんが、それをピークにして、それ以上に伸びることはなかなか稀なことだと思うんですね。だから私は、1年間は踏ん張ろうという気持ちで頑張りました。辛かったですけどね。でもそれも考えての資金調達をしていましたからね。それから開店後1年を機にして、全国紙の取材を受けたりもしましたし、ホームページも作りました。右肩上がりにということではないですけれども、それなりに、結果は出せていると思います。

そんな中やめたいと思ったことはありますか?

photo2.jpgガラス張りのおしゃれな外観正直ありましたね。でもそれは、仕事が辛くてもうだめだ、ということではなくて、次のステップにどう上がろうかなという苦しみでした。
しかし、それがあっての今だと思います。来てくださるお客様からも励ましの言葉をいただきましたし、そういうお客様がいるからこそ、ここまでやって来られたのだと思います。

開業してよかったと思うことは?

私たちは、食事とともに、食事をする空間をも提供しているわけです。お客様は、食事をするために、会話を楽しむために、季節の上海蟹を食べるために(笑)何かしらの目的を持ってお店に足を運んでくださるわけですが、私たちが作った空間の中で、満足のいく時を過ごし、喜んでいただけることが嬉しいですね。営業時間が午後6時半から午前2時までなんですが、長い方は、営業時間いっぱいいらっしゃることもあります。会合が終わって、11時からコースをという方もいらっしゃいます。そんなお客様にも、私たちのお店では、時間的に窮屈な思いをせずに、のんびりと楽しんでいただける様にしております。お客様の状況に合わせて、私たちのお店を選択して来てくださるのに喜びを感じますね。

では成功したポイントはなんでしょうか?

photo3.jpgまだ成功したとは思っていないんですけど・・・。私のやり方は、レストランの経営に関しても、中国料理というジャンルの中でも、異質なところがあるのではないかと思います。お店の名前にしても、作りにしても、少し型破りなくらいをイメージしています。まだ誰もしていないようなことを、徳島で、徳島から始めたいと思っています。これから独立する人たちが真似たり、参考にしたりするなら、それは嬉しい限りです。この界隈の活性化、延いては徳島の活性化、元気な徳島から全国へ向けて発信することを意識しています。他にないことをする、ないものを作る、そういう挑戦は冒険だし、きついし、リスクもあります。でもそういうものができていかないと、お店はマンネリ化してしまいますから。10あるやりたいことを1つずつ引き出しながら、お客様を飽きさせることなく、驚きを提供していきたい、バランスのよいお店作りをしていきたいと考えています。

これから独立する方へ一言お願いします。

まず1つ目は、お店の空間作りをするときに、多少無理をしてでも、自分のイメージを徹底して再現するということです。中途半端はよくない。資金的にどうしてもできないのであれば、規模を縮小したらいいんです。そしてまた何年か後に拡大する。トータルイメージから、これとこれはいうふうに抜粋してしまうと、バランスが悪く、安っぽくて中途半端なものにできあがってしまいます。 
2つ目は、どういう客層がターゲットなのかを考えるということです。例えば、団体客なのか個人客なのか、またはファミリーなのか、収入がある一定以上の層なのか一般的な層なのか、客層はそういう側面から捉えることもできます。立地条件によってもある程度決まってくるものはあると思いますが、このターゲット層を見定めることによって、自ずと経営的な戦略も立つのではないかと思います。 
要求されるものに対して柔軟に対応できることが大切です。でもそれには経験が必要。開けてみたらわかることがたくさんありますけどね。だからいろんな人からいろんな話を聞くことですね。その上で自分のイメージを作り上げていく。ただ単に、これがしたい、あれがしたいと漠然と思うだけでは答えはでませんよ。失敗してもいいんです、毎日が試行錯誤です。それを次につなげていく、それこそが成功への道です。