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開業体験談 Vol.32 「can do=為せば成る 私を奮い立たせてくれた言葉」

kotani.jpg今回は、デリ・カフェ・キッチンCAN DOオーナーの
小谷稔美氏の独立開業体験談を紹介させていただきます。
開業を考えている方はぜひ参考にしてください。


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PROFILE

小谷稔美 / Toshimi Kotani 
デリ・カフェ・キッチン CAN DO
昭和37年8月19日 生まれ AB型

徳島県徳島市生まれ。43歳で独立。 
専業主婦から子供の入園を機に独立を考え始める。飲食店での勤務、調理専門学校を経て飲食の知識を得る。宇宙飛行士の野口氏の言葉をきっかけに開業を決意。 
2005年10月に徳島市で開業。 
座右の銘「成せばなる」 
趣味は、「テニス・料理」

COMPANY

デリ・カフェ・キッチン CAN DO
徳島県徳島市北沖洲3丁目6番32号 
TEL.:088-664-5001
営業時間:AM11:00〜17:00
定休日:日曜・祝日

職歴、経歴を教えてください。

結婚してからはほとんどパートタイマーとして働いていました。徳大の研究室のお手伝いを13年間しましたが、それも子供が幼稚園に行くようになったのを機に辞めました。幼稚園に行っている時間は短いですから、その後預けてまで働くのは、正規採用でもないとなかなかですよね。もともと独立して自分のお店を持ちたいと思っていましたし、それなら子供を見ながらできるかなという思いもありましたので。いったんそれまでの仕事を辞めることにしたわけです。

子供さんが幼稚園に行くようなったのが転機だったわけですね。
それから開業までの経緯は?

gaikan.jpg川内にあったピエーノという石釜でピザを焼くお店で3年間働きました。そのとき上司だった人がとても面倒見のいい方で。今は、北島でクイーン・アン・ヒルというお店をされているんですが、私も常々「お店をしたい」という話をしたりしていたので、開業のときにもいろいろ相談に乗っていただいたんですよ。その後、やはり川内にあったパパベルのレストランで5年間働きました。どちらも昼間、子供のいない時間帯に3〜4時間のパートです。その間もずっと開業したい気持ちはありましたが、やれるかどうかという客観的な判断ができなかったので、平成調理師学校に行くことにしたんです。料理人としてやっていけるのか、自分を試してみようと思ったんですね。衛生面などについてのきちんとした知識もありませんでしたので、そういうところも勉強しながら1年間通いました。学校に行きながら、空いている時間は、クイーン・アン・ヒルさんで鍋を振らせてもらったり、試食させてもらったりしていたんですよ。 
思い切るきっかけになったのは、宇宙飛行士の野口さんの宇宙からのメッセージ"can do"(為せば成る)という言葉を聞いたことです。感動しました。「そうよなあ、やってみんことにはわからんよなあ」と。20歳のときに学校に行き始めたのに比べると、私の場合40歳の時ですから。やるのも今、止めるのも今、という気持ちでしたね。

資金調達や開業の準備はどのようにされたのでしょうか。

そういう面の知識が全くなかったんですね。いろんな方から話を聞いたり、中でも一番お世話になったのがクイーン・アン・ヒルのオーナーさんです。お金の借り方とか、厨房機器を買うのならここでとか、いろいろアドバイスしてもらいました。厨房機器はそのオーナーさんの紹介で、徳島厨房((有)徳島厨房)で購入したのですが、そこの社長さんがまた信頼できる方で。内装、電気、ガス全てにおいて、全面的にお二人にお任せしました。ノウハウも知識もない私だけだったらやれていなかったと思います。

借り入れは問題なくできましたか?

思いの外すんなり、ですね。主人がサラリーマンをしていますから、保証人になってもらって、借りたのは300万円、自己資金は200万円くらいでした。家賃が10万3千円で、敷金に6ヶ月、礼金に2ヶ月。設備と内装に450万円くらい掛かったと思います。

開業時の売上げはどうでしたか?

tennnai.jpg最初のうちは、今の売上げの2/3くらいだったでしょうか。でもお陰様で、四国放送やASAが(お店を)見つけてくれて、テレビや雑誌に出たりしましたので、そこからは順調に。1ヶ月くらいは友達が一生懸命来てくれましたね。3ヶ月目くらいになると友達の誰かは常時来てくれていて、そのうちに、友達のそのまた友達が来てくれるようになってというふうに、相乗してお客さんが増えていった感じです。

やめたいと思ったことはありますか?

開業してからしばらくはへとへとでしたので、そのときはさすがに。モーニングの準備のために8時くらいにお店に入って、終わりも今より1時間遅い6時までやっていましたので、家族は夕食を買って食べるような状況で。本末転倒だと思って、今は、モーニングを止めてオープンを11時、クローズも6時だったのを5時に短縮してやっています。夜はしていませんから、売上げは今一つですけど、今のところ昼だけ仕事をするスタイルでいこうかと思っています。開業直後は、仕事と家庭のバランスが悪くなっていたんですね。家族がどんなに家事を手伝ってくれても、家事で主になるのは母親ですから。私は極力、家事と仕事、両方のバランスを取りながらやっていきたいと思っています。子供達が私をもっと必要とするのであれば、営業時間を短くするとか、人に入ってもらうとかして働く時間を短縮しようかとも考えていましたが、今のところはなんとかやっていけています。

たいへんな時期を乗り切ってこられたんですね。

今でもけんかしたりしますよ(笑)疲れていたら、言わないでいいことまで言ってしまうし。でも主人は普段仕事に行っていますが、休みの日には手伝ってくれるんですよ。大変なんじゃないかと思います。女性が開業していこうと思うと、家族の協力、理解なしにはできませんね。あと、親身になって相談に乗ってくれる人がいるのは心強いですよね。私の場合は、主人を始め、料理のことはコックさん、経営のことや店全般的にはクイーン・アン・ヒルさんに相談します。自分だけではなかなかうまくはいかないと思います。

開業してよかったと思うことはありますか?

年中ありますよ。お客さんからの「おいしかった」という一言が一番です!今日もそういうふうに言っていただいたお客さんがいらっしゃって、「今晩もう一回食べたいから」と昼食べたのと同じ物を持って帰られたんですよ。そういう人との出会いは楽しいです。私は褒められて伸びるタイプ(笑)そこが原動力です。

開業されて3年目、これからどのようなお店にしていこうとお考えですか?

tennnai2.jpg家庭的で、ゆったりとくつろげる居心地のいいお店になればいいなと思います。食事だけして、さっさと帰るのでは勿体ないようなお店になればいいですね!うちのお店は、スタッフもみんなかわいらしい子ばかりですし、友達はもちろんのことお客さんにも恵まれて、温かい人間関係の輪が広がっています。お客さんは、私より年上の方が多いんですよ。そんな方々はご自分でもちゃんと料理をされている方達ですから、この前の栗ご飯の時なんて「あんたこれ、よー剥けたなぁ」なんて逆に言われることもあります(笑)

ただ私はあまり長いスパンで物事を考えられないんですね(笑)10年後の自分なんて想像できないので、とりあえず1年頑張れたからもう1年というふうに、1年1年で考えていっています。最初の1年も、この1年もあっという間でしたね。

成功したポイントはなんでしょうか。

成功したとは思っていないんですけど・・・。たぶん、あまり欲張りじゃないのが良かったのかな。物欲がないんですよ。実のところ、趣味の範囲でできればいいなというのがあったんですね。好きな料理ができて、みんなが食べてくれて、おいしいと言ってくれたら幸せだな〜ということで作ったお店です。主人が別に働いていなくて、お店で生計を立てなければならなかったとしたら、こういうスタイルのお店にはなっていないんじゃないかと思います。こんなやり方ではだめだったと思うんです。幸い、主人が働いてくれているので、のんびりとおおらかな気持ちで仕事をしています。

これから独立される方へ一言お願いします。

「人の輪を大事にしてください」と申し上げたい。それと、焦ってもいい結果につながることは少ないと思いますので、よいきっかけ、やれるタイミングというのをよく見極めてください。やりたいと思うと焦る気持ちが出ますけれども、それにはやはり適した時というのがあります。あんまり頑張り過ぎて、無理をしてだと、うまくいかないんじゃないかなと思います。

起業する女性の方へ一言お願いします。

想像以上に厳しいです。家庭を持たれている方は、肉体的にもきついですしね。よっぽど体力をつけておかないと。オープン直後は出血をするくらい精神的にも追い込まれましたし、家の方も、店の方もと、心身ともに疲弊してしまいました。でも私も、特に専門的な知識があったわけでなし、食べることや料理するのが好きだっただけ。女性の方でランチ巡りされている方がいますよね?私も同じです。そんな私にもできたんですから、やる気があれば、誰にでもできると思いますよ。恐れることはありません。自分がおいしいと思う物を、提供していけばいいんですから。