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開業体験談 Vol.37 「店=恋人って胸はって言える」

nitta.jpg今回は、ヨジョン亭オーナー、
新田稔氏の独立開業体験談を紹介させていただきます。
開業を考えている方はぜひ参考にしてください。

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PROFILE

新田稔/ Minoru Nitta
ヨジョン亭 オーナー
昭和30年9月18日 生まれ

徳島県阿南市生まれ。40歳で独立。 
大阪の中華料理屋で25年間務める、その経験を活かし徳島で専務夫妻が経営していたヨジョン亭を引き継ぐ形で開業。 
1995年6月に徳島市で開業。
趣味は、「仕事」

COMPANY

ヨジョン亭 
徳島県徳島市住吉4丁目2-3
TEL.:088-655-0753
営業時間:PM17:00〜PM23:00 
定休日: 不定休

独立前の職歴を教えていただけますか?

中学を卒業して、昭和46年に大阪の中華料理屋に就職しました。そこで25年間働き、その後、徳島に戻ってきました。

独立心は強かったんですか?

photo1.jpgそんなこと無いですね(笑)元々、僕にはあまり独立心は無く、どちらかというと「ずっとサラリーマンでいたい」と考えていました。僕は16歳の時から給料の8割くらいを将来のためにずっと貯金をしていたので、若い時からまとまったお金が貯まっていました。それで車や家を購入したんです。普通の人なら「家より商売が先じゃないの?」と思うでしょうが、僕は「家を構えて、いいお嫁さんをもらって・・・」という気持ちが優先したんですね。それが30歳頃でしょうか。

ではなぜ独立しようと思われたんですか?

勤め先の中華料理屋が倒産しまして・・・当時はしかたなく独立した感じでしたかね〜開業するにあたって長く続けた中華料理ではなく、焼肉屋を選んだ理由は、中華料理は歳をとったら絶対できない商売だということですね。鍋を振ったり、体力的にも40歳を過ぎてはきつい仕事だと思います。でも僕は、歳をとっておじいさんになってもできる商売がしたかったんです。焼肉は切って出したらお客さんが焼いてくださるし、鍋と肉出したら終わりだと、そんな単純な発想なんですけどね。(笑)

資金調達はどのようにされました?

実は、16年前くらいに元々、ここにはヨジョン亭があったんです。そして務めていた会社の専務の奥さんが徳島の方で、その縁でここ徳島で専務ご夫妻が経営されていたんです。そこで僕が徳島の出身だから「徳島に帰ってやってみますか?」とお話を頂いて、是非にとお受けしたんです。自分たちも少しばかりですが蓄えもあったので、それで開店できました。

では、開店当初の売上はどうでしたか?

良くはなかったです。ずっと、一日の売上が2万とか3万のときもあったんです。最初の1年くらいは嫁がスーパーに働きに行って、月6万のパート代を稼いできていました。でも、だんだんと売上も上がり出し、マンションも購入できたので、スーパーのパートも辞めて、ヨジョン亭に集中できるようになってきました。でも最初は不安でしたから、やれるものはやろうと中華料理の経験を活かして中華料理を出したりしていました。焼肉屋なのにおかしいでしょ?お客様に来て頂けるようになってから餃子以外はやめましたけどね。

やめたい、と思ったことはありますか?

photo2-1.jpgんー、最初1年くらいはありました。1日2万くらいの稼ぎなんて面白くないし、働きに行った方がいいでしょ?2万では一日の材料費や人件費を引いたら何にも残らないから・・当時働きに出たら1万3千円くらいもらえましたからね、働きに行くより安い利益ならしないほうがましじゃないか、と思っていました。嫁にも苦労をかけました、嫁がパートで働きに行っているのにその間に僕はパチンコに行っていたんですよ〜。考えられないでしょ!(笑)うまくいかないことでおもしろくなくて・・・でもこれではあかん!!なにしているんや!と思い直したんですね。であわわさんやフリーペーパーを活用しだしたんです。あの時はすごくあわわさんに助けられました。紙面で宣伝させてもらってね、そのうちに段々と売上も右肩上がりになっていきました。
途中からは、とりあえず名前を知ってもらう、ということに集中しました。それに、やっぱり紙面なので目で見て「美味しそう!食べに行きたい!」と思ってもらわなくてはいけません。ですから、載せる写真にはとてもこだわりました。それで来てくれて食べてくれたら味は分かるし、好きになってくれるのも、ならないのも、食べてから判断して欲しい!と思っていました。

開業してよかったことは?

それはもう、最高!お店が宝物です。ヨジョン亭が無ければ今までのいい時間はありません。毎日商売するのがすごく楽しい。もうウキウキです。
鴨島支店(’07〜)も工事期間中は毎日顔を出していたんです。妹が鴨島店を独立採算制でしているのですが、最初が一番大事な時だし、ほっておくわけにもいかないでしょう。あと秋田町もオープンするんですけど、こちらは僕の叔母といとこの家族でやる予定です。こちらも独立採算制なんですけど、期待と不安でいっぱいです。また住吉は5時から11時までやっているんだけど、お客さんが入り始めるのは6時くらい。実質の営業時間は4時間くらいのものだから、その中で売上を上げないといけません。ピークは7時くらいなんだけど、うちはテーブルが6つしかないでしょう。すぐにいっぱいになってしまうんです。お断りするお客様もいらっしゃいます。最近は平日でもお断りしないといけないときもあって…でも混んでいるのをお客様も知ってらっしゃるんですよね。それでも寄ってくださるというのはありがたいです。もう少し大きくしたいというのはあるんですけどね。ここを閉めてまで、とは思わないんです。やっぱり最初に始めた場所ですからね、愛着が一番あります!

成功したポイントは何でしょう?

やっぱりうちの一番は味ですね。愛想が良いわけでも店の雰囲気が特にいい、というわけでもないと思う。やっぱり味ですね、味しかない。鴨島店ができた時でも、お客様に聞かれるのは、「味は同じなの?」でしたから。「この味じゃないと行かない」、「これじゃないと嫌だ」とか、苦しい褒め言葉ですよね。ですから鴨島店を出すときにも、「味は変えない」が絶対事項でした。でも、重要なのはやっぱり人です。基本のタレを僕が作っていようとも、やっぱり、任せる人間が一番大事です。

これから独立される人に一言お願いします。

photo3.jpgやっぱりお客様第一です。あとはマスターが店を大好きになることです。そうゆう店は流行ってる。
僕もそうだけど、店が大好きだから家より店です。家は、もう寝に帰るだけですね。起きたらすぐ店に行って仕込みして、家に帰って仮眠して夜から営業。その繰り返しです。店はこまめに掃除するけど家は掃除なんてしないし(笑)店は恋人みたいです。うん、店は恋人。そりゃあ、多分嫁さんもちょっとヤキモチ焼いているんじゃないかと思います。嫁さんくらい店好きですもん、僕。(笑)
休みの日にしたって、店に来て掃除したり、メニュー考えたり、ごぞごぞしています。それくらい好きなんです。でも、そんな店って流行っているんですよ。あんまり好きじゃない人はだめですね。自分の店で商売するって楽しいし、流行ったら面白いし、そしたら店が恋人になるからって、それくらい店が好きだって胸張って言えるようになれよ、って言っているんです。僕は実際そうやって売上を上げてきたし、店をキレイにするのは彼女をキレイにするようなことで、店に行くのは彼女に会える、ってくらい楽しみで、何をするのでも楽しくなります。店に居るのが嬉しいし、楽しい。店を繁盛させることでもっと店が好きになりますよ。
まあ、将来的にはラクしてゆっくりするっていうのも考えています。嫁さんと旅行に行ったりね。店を休みたくないから旅行も行かないんですよ。頑張っているからたまには旅行でも行ってゆっくりしたいっていうのもあるでしょう。ですからとりあえず60歳過ぎくらいまでは勢いで頑張りたいと思っています。そして60くらいになったら少しゆっくりしようかな、なんて思っているんですけどね。でも友達みんなにも言われるんですけど、60歳過ぎても店にべったりちゃうか〜って「死ぬまで店と添い遂げたい」っていうのもあります(笑)