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開業体験談 Vol.44 「僕は派手なことが好きですね!」

usa.jpg今回は、 surf shop USAオーナー 木村 敦氏の独立開業体験談を
紹介させていただきます。
開業を考えている方はぜひ参考にしてください。

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PROFILE

木村 敦/Atsushi Kimura
surf shop USA オーナー 
昭和46年6月30日 生まれ O型 

板野郡土成町生まれ。31歳で独立。
冬場の経営が大変な サーフショップ、そんな時、大家さんや奥様の理解と協力で乗り切ってこられた木村氏。だからこそ人の大切さを理解されていて、人の和を重んじられているオーナー様の体験談です!!
2002年1月に徳島市で開業。 
好きなことは「釣り、サーフィン」 

COMPANY

surf shop USA
徳島市安宅2丁目2-55手塚ビル1F
TEL.:088-626-0685
営業時間:AM11:00〜21:00
定休日:無休 
URL http://surfshopusatokushima.com/

学校を卒業されてからの職歴、経歴を教えてください

徳島工業高校を卒業してから鴨島のデニム工場で働いていました。その後、徳島CITYの中にあったABAHOUSE(アバハウス)という服屋さんに1年間いて、20歳のときにそごうのMcGREGOR(マックレガー)に移って28歳まで8年間勤めました。そこを辞めてからサーフショップにアルバイトに行くようになりました。

そこが原点になるんですね。将来的にはご自分でサーフショップをしようと思ってのことだったのですか?

それまでの仕事がちょっと嫌になってきていたのが25歳くらいの時なんですが、僕はその時ニチメンインフィニティという商社の人間でしたから、そごうの中にあるMcGREGORなど関連会社のブランドのお店に出向、という形をとっていたわけですね。そごうが民事再生法の適用を申請した時期でもあって、お店としても大きな損失を出したにも関わらず、それが補填されることもなく、赤字、人員削減と、だんだんとやる気がなくなってきて。結局それで退職したんですが、ちょうどその頃、知り合いだったサーフショップのオーナーが病気で倒れて、後継者がいない方だったので、僕にしばらく店を見てくれないかと。僕もサーフィンをしていましたし、道具の名称なんかもある程度知っていたのと、営業経験もありましたから。そういう経緯で、サーフショップで働くようなったんです。

以前から独立したいという気持ちはあったんですか?

photo1.jpg何かで独立したいという思いはありましたけど。服屋に長い間勤めていましたので、東新町なんかのお洒落なお店で5千万とか1億の年商を上げるのを見たりもしてきましたが、でもやっぱり悪い時もありますから。服屋に夢がなくなって、次はもう接客なんかでしゃべらなくてもいいような仕事がいいなと思っていたんですけどね。職人になろうかなと考えたこともあるんですよ。先輩がペンキ屋さんなんですけど、海にも頻繁に行っていたし、サラリーマンに比べたら自由ですよね。いいなぁと思っていました。それで少し職人の修行したりもしましたけど、オーナーが倒れてしまったので。

しばらくはアルバイトで、途中でお店を引き継がれたんですね。

そうです。31歳のときに店を引き継ぎました。オーナーと僕との信頼関係の中で、内々に棚卸しをして、そのとき2千万円分くらいの在庫があったんですが、古い商品も含めて800万円くらいで看板ごと買い取りました。しばらくは買い取ったときのまま昭和町の店舗でやっていましたが、今年の3月にこちらに移転してきました。

この場所を選んだのはなぜですか?

まず県と市に連絡して、橋(東環状大橋)が4年後、2011年に完成というのを確認して。バイパス、幹線沿いにはもう同じようなお店がありますから、そこから少し離れていて、小松海岸に近くてという条件で探しました。移転する半年前くらいから、前の場所で店をやりながら、仕事の前と後に車でこの付近をぐるぐる回りましたよ。前の店は場所を説明しにくかったんですが、ここの店は「本庁の交差点を東にまっすぐ」と説明しやすいんですよ。高校も3つあるし、若い人たちが誰か門を叩いてくれないかなという思いもあったり。自分はもうプロにはなれないですし、若者に夢を託すというか。

夢を叶えられたわけですが、移転時の資金調達はどのようにされたのでしょうか。

親に保証人になってもらって、銀行から600万円の借り入れをしました。家賃が9万円、敷金3ヶ月、礼金1ヶ月。店舗改装は、独立して工務店をやっている知人に原価でやってもらったので、お店を作るのに掛かった費用としては110万円くらいですね。あとは設備に100万円くらい。パソコン、テレビ、電化製品だけでもそこそこ要りますし、インターネット環境を準備するのにも、光回線を引いたりして10万円くらいは掛かったと思います。新しい商品の仕入れに200万円くらい。残りは運転資金です。店を引き継いだ時の買い取り費用も、月々オーナーに返済していましたので、それが毎月9万円くらいですね。決して楽ではなかったですよ。
あと、ここを借りてしばらくした後に「隣りに別のお店が入るのは嫌だな」と思って、隣りも借りたんです。隣りではボードの修理をしたりしています。タコス屋さんをやっている友達がいて、場所がないと言うので「ここでやったら?」ということでタコスカフェもしています。彼もサーフィンをやっているので、タコス屋兼修理担当です。

では隣りの分の費用も必要だったわけですね?

隣りは基本的に"修理の場所"なので、あまりお金を掛けていません。手作りしていますし。あと、カリフォルニアにいる、ボードを扱う会社をしている知人が少し出資をしてくれています。

カリフォルニア、ですか?

photp3.jpg商品の買い付けにカリフォルニアに行くんですよ。カリフォルニアはいいですよ、のんびりしているし気持ちがいい。仲間と一緒に行ったりもしますよ。現地に知人がいるので、家を1軒借りておくと飛行機チケットだけでいいので安く行けますから。やはり、サーフィンの流行はカリフォルニアが発信元なんですね。世界規模の展示会があったりもしますし。そこから世界に向いていくわけです。東京で仕入れをするより、いっそ本社のセールとかバザーとかに乗り込んで買い付けするんです。安いですよ。サーフショップもたくさんありますからね、ライバルも多い。他店では扱っていないような商品を安く仕入れる、そのあたりを追求していかないとね。

どんなものを買い付けてくるんですか?

服とかボードとか靴とか・・・。行く前には、まだ日本に入ってきていない商品をリサーチしてから行くんですね。僕はあまり商売っ気がないので、レアな物でも倍くらいの値段で売るんですけど、インターネットオークションで見ると5倍くらいの値段になっていたりします。マニアがいますからね。サーフショップという構えですけど、売る商品は限定していないので、この間行った時にはボディクリームをたくさん買ってきたんですよ。向こうは乾燥しているので、シャワーの後にボディクリームを使っている人が結構多いんですね。嫌らしくないいい匂いで、長時間もつんですよ、これ。1週間から10日くらいで完売しました。日本でも都会であれば売っていると思うんですけどね。お客さんがスナックにつけて行ったら「いい匂いがするな〜」って言われたそうで、次の日にスナックのママさんが来て全部買ってくれました(笑)何が売れるかわからないですね。基本はサーフィンなんですけど、「サーファーおしゃれでもいいやん」っていう感じで。こういう商品の方が利益が出るんですよ。500円くらいの原価の商品なのにインターネットで3000円で売られているんですよ。靴なんかだと最大で倍くらいが相場ですからね。向こうに行った時には、もちろんサーフィンしたり遊びにも行きますけど、買い付けの時は真剣に。何が売れるだろうとアンテナを立てて、ショッピングセンターやモールを見て回って、おもしろいものがあったら買って来ます。アメリカ人にとっては普通のスーパーだから、日本人がダンボールで買って行くのは不思議なんだろうけど、「レジ、はよしてよ」みたいな(笑)でも、そんな商売している日本人も多いと思いますよ。

成功したポイントは何でしょうか?

僕は派手なことが好きなんですよ。他でやっていないようなことをするっていうのがね。店の前でタコスカフェをやっていますけど、サーフショップの隣りにハンバーガー屋さんがあったりタコス屋さんがあったりというのはカリフォルニアではよく見るスタイルなんです。サーフィンのあと集まって、休憩して、昼からまた海に出てという感じで。

たいへんだったこと、やめたいと思ったことはありますか?

前のオーナーとは、考え方ややり方に違いがあったので、そのあたりで悩みましたし、辞めたいと思ったこともあります。オーナーにも愛着のある店だったでしょうし、引き継いだ後も度々店に来ていましたので、なかなか自分の色を出せないというジレンマですよね。それでもオーナーからは経営についても教わりましたし、長いことやってきていた先輩でもありますから、しばらくはそんな思いを持ちつつもやっていましたけど。僕を慕って来てくれているお客さんもたくさんいましたし、サポートしてくれているメーカーさんもいましたから辞められませんでした。でも、引き継ぎ前に3〜4年、引き継いだ後に3年、オーナーと一緒にやらせてもらって、もうそろそろいいかなと。それで移転することにしたんです。

独立当時の売上げはどうでしたか?

食えるくらい?今も一緒ですけど。自分の中では常に「年商はこれくらいいきたい。それなら月にこれくらいで、毎日これくらい」と、目標と計画を立ててはいましたけど。

たいへんな時をどうやって乗り切ってこられたのでしょうか。

photp2.jpg8百何十万という在庫を買ってしまってからは、それをどうにか売っていかないといけないわけだし、家族もいますから生活していかないといけない。やらなきゃという思いですね。店の家賃、光熱費はどうやってでも払わないとならないけど、自分の家の家賃は「払えないので待って欲しい」と、大家さんに頼みに行ったこともありますよ。妻の給料だけでやっていたような時もありますし。サーフショップはどこもそうだと思いますけど冬場は苦しいんですね。確定申告の時期あたり、税金もありますし。いつもいつも冬どうしようか、どうしようかと考えるんです。考えながら、お正月が来て、確定申告の時期が来て、春が来る、そうすると、3月4月と店も忙しくなってくる、そういう感じでなんとかやっています。 
オーナーという立場上、必要な出費もありますよね。例えば、県外からわざわざメーカーの営業さんが来てくれたりとか、そんな時にはごちそうしてあげたいし。よく他に起業していた友達のお店を利用したりしますよ。お互いに持ちつ持たれつ、横のつながりを大事にしておいて良かったですよ。苦労は多いですが、家族や友達に助けられています。

これから独立する人へ一言お願いします

オーナーたる者、お金の使い方にも行動にもメリハリをつけないとだめです。あとは、思い付いたことを書き留めておくようにする、ということでしょうか。気付いたこととか、車を運転していてちょっと思い付いたアイディアとかイベントとかメモしておくんです。常にお客さんが楽しめるようなことを提供していかないと、足も遠のきますからね。お客さんを盛り上げて、楽しませて、店に来て貰えるようにということです。例えば、お客さんと家族ぐるみで近県に小旅行をしたりするとみんな楽しいし、僕らも家族の方との交流を図れるでしょう?インターネットで、そういうイベントごとの報告をしたりすると、参加された方もまた嬉しいでしょうしね。そういうふうに常にいろんなことを考えて、企画していますよ。僕は県のサーフィン連盟の役員をやっていることもありますので、大会にはきっちり参加するようにもしています。あと、サーファーにも、のんびりとゆっくりとサーフィンを楽しむ人、競技としてする人、タイプがあるんですけど、それぞれとバランスのよいお付き合いをするようにも心掛けています。

最後に、銀行なんかで借り入れをするつもりなら、アルバイトでも確定申告はしておくべきですね。そうするとある程度の信用が得られますし。借り入れもし易くなります。税金はきちんと払いましょう(笑)