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開業体験談 Vol.39 「試行錯誤の数年間、安全な物をお客様へ!」

kondou.jpg今回は、自然派ハム工房 リーベ・フラウ オーナー
近藤保仁氏の独立開業体験談を紹介させていただきます。
開業を考えている方はぜひ参考にしてください。

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PROFILE

近藤保仁 / Yasuhito Kondo 
自然派ハム工房 
リーベ・フラウ オーナー 
昭和38年8月16日 生まれ A型 

獣医を目指して大学院を卒業、しかし目的ある仕事がしたいと、
小さい頃のお父様との思い出とお客様の喜びを胸に、無添加の自然派ハム工房を設立。
名西郡石井町生まれ。36歳で独立。 
1999年5月に石井町で開業。

COMPANY

自然派ハム工房 リーベ・フラウ 
名西郡石井町高川原字高川原2268-3
TEL.:088-637-4567
営業時間:AM10:00〜20:00
定休日:水曜日 
URL  http://www.wiener.co.jp/

北星大学大学院を卒業後の職歴、経歴を教えていただけますか?

卒業したのが25歳でした。その後、26歳で徳島に帰ってきました。ウインナークラブという会社を兄達が経営していましたので、そこの手伝いをしていました。ウインナークラブは私が徳島に帰ってくる前年に、豚肉を処理加工する専門の会社として設立されました。一方で祖父の代より、家業は養豚業です。せっかくおいしい豚がここにあるんだから、この豚でウインナーを作らないか?ということで豚肉加工が始まりました。私がウインナーの加工部門を始めたのですが、始めるのにあたって何の修行もしていなかったので、その当時、四国内のある添加物業者の元で学ばせていただきました。でも結局あまり役には立たなかったんです…教えていただいたのですが、基本は学べなかった。ドイツでは理論がきちんとあって、実習・応用があって、親方から弟子の徒弟制度も厳しく受け継がれています。でも日本はそうじゃないんですよね。防腐剤を使ったり、肉に水分を注入して膨らませたりすることが、大切な技術だといいます。私達が学びたいのは、自分達が育てた安全な豚を使って本当に美味しいウインナーを作ってお客さんに食べてもらう、そんな仕事を目指していたのに、私達が学びたいことを教えてくれる業者さんは、一切いませんでした。毎日製造しながら「どうすればいいんだ」「これでいいのだろうか」、と考える日々でした。やろうとしていることの本当のところが見えてこない状態でした。いろんな業者さんにお願いしてソーセージ作りを教えていただく、でもうまくいかない、でまた違う業者さんに教わる・・・そんな事を繰り返していました。
でもある日、生協の方のご紹介でマイスターの資格を持つオランダ人のダンカースさんという方に来ていただいたのですが、その時に「あなたのやりたい、学びたいことはドイツじゃないとできないよ」と言われました。自分で豚を育てて、それを加工してウインナーを作る、そこまで考える会社は今の日本にはどこにも無いんだということでした。そして、「学びたいなら紹介してあげるから、そのためにはある程度のウインナーが作れるレベルになってください、それをクリアしなければドイツではやっていけないし、紹介するのも恥ずかしい。だから1年間必死で頑張ってください」と言ってくださいました。そしてダンカースさんを会社に雇い入れる形にして一年間みっちり教えていただきました。ウインナーの作り方はもちろんですが、ドイツ語やドイツの習慣など、いろんなことについて学びました。そして、その後ドイツに行って修行しました。

なぜ豚の飼育から始まるウインナー作りを始めようと思ったのですか?

生産者からすると豚はどんな餌で育てようが、大きくして売ってしまえばおしまいなんですよ。でも私達がしようとしていたのは自分が育てた豚を加工して、食べていただいて評価していただくということなのです。基本的な考え方が全く違うんですね。だからこだわった餌や品種、色んなところに気を遣わなくてはいけません。一般の生産者は豚を少しでも多くのお金に換えたいんですよね、でも私達はお金ではなくて食べる方のことを考えて豚を育てたい、そうして育てた豚を使って添加物を一切使わない美味しいソーセージつくり、たくさんの方達に喜んでいただきたいという思いでした。

今、食の安全性が騒がれていますが、それを見越してのことだったのでしょうか?

いや、それは全然意識していなかったです。ただ純粋にせっかくこだわって育てた豚をハムやソーセージにするのに添加物漬けにしているのではおかしいだろう、という思いからでした。メーカーはこだわった豚であろうが、どんな豚であろうがそんなこと関係ないんですね。常に一定した同じ味を出すということが目的なんですから、僕達とは発想が違います。だからそういう面では学ぶところは全くなかったです。

学校に通われていた頃からこんな仕事がしたいと思われていたのですか?

いいえ、思っていなかったです。僕も最初は獣医を目指していましたし、卒業が近くなる中で、公務員や県職員になるとかの選択肢もありましたから、自分がこんな仕事をするとは思っていませんでした。途中、ウインナークラブができたり、帰郷の催促があったりで、目的無く働くより、目的があって働けるなら一石二鳥だと考え、徳島に帰ってきました。それにウインナーが自分で作れるっていうことにすごく興味がすごくあったんです。小さい頃、父に連れられて度々ハム工場に出入りしてたんですが、事務所へ上がる階段の下に真っ赤なウインナーが吊ってあるんです。それでそこのおじさんがちぎって僕にくれるんですよね。うれしくてね〜それが僕のウインナーに対する気持ちを育てたというか・・・憧れみたいなものがあったんでしょうね。それで実際に作り始めたらどんどんのめり込んでいって、きちんとこだわったものを作りたい、と思うようになりました。

では独立時の資金調達はどのようにされましたか?

(有)石井養豚センターを母体にしているので、農林金融公庫から全額借りました。

創業時にかかった金額をお願いします

建物が3000万、機材等が2000万になります。

創業時の売り上げをお願いします

大変でしたよ〜(笑)売上が月に300万ぐらいでした。平日の売り上げが4〜5万円程でしたので経費だけでも一日2万円かかりますから月末の支払いがギリギリで大変でしたね。支払い期限を待ってもらったりすることも最初の1、2年はありました。それから徐々に売り上げが良くなり、今では当時の倍以上の売り上げを上げるまでになりました。

そのような時期から成功されたポイントはなんでしょうか?

やはり軽く考えていては保たないですよね、売り上げを上げるには何をしなければいけないか考えなくてはいけません、これは今でも続けている事で今は前年のデータ等もあるのでそのデータと比べながら新しいやり方を考えています。お客様の消費意欲をかきたてるようなアイディアを出すのがポイントです。それから『売り上げが上がっていく!』という想像をすることです。毎月30万売るぞ!と強く思えば結果は付いてくるんですよね。これができないと無理だと思います。

インターネットでの運営はどのようにされていますか?

ホームページ自体は開業当時からあったのですが、私はインターネットの“イ”の字もわからない位インターネットに関してはさっぱりなので、今は更新から全てを任せている形になっています。今年の八月にリニューアルオープンしまして任せてる方には売り上げの8%を報酬として支払い運営してます。彼が頑張れば頑張る程売り上がり、彼の所得も上がるわけです。今まではインターネットでの売り上げが0に近かったのでとてもいいと思います。

これから独立される方へ一言お願いします。

まず、独立を目指す職種についてしっかりとした勉強や修行をして下さい。
そして辛い時期があっても我慢ができることが大事、常に店の事を考え、どうやったらお客さまに来て頂けるか自分の店の何が良くて、何が悪いかを客観的に見る力も大切です。石の上にも三年という言葉があるように三年もすれば絶対に道は開けてきます。
農家の方にはご自分で作られた生産物に絶対的な誇りと自信を持って作っていただかないと駄目だと思います。それに手間もかかるし大変な作業ですが他と同じではいけません、絶対他とは違うという事を売り出し、皆に食べて頂く価値があるようないいものを作って下さい。